牡猫ムルの人生観
[1. まぬけ犬推進委員会推薦図書]
ベルナ:「インターネット(EasySeek)で買った古本の『牡猫ムルの人生観』(ドイツ。1820〜22)が届いたわ!!!編集者はホフマンって事になっているけれど、本当は牡猫のムルが書いた本なの!!!」
ロビン:「ふふふふーん。なんか『吾輩は猫である』みたいだね。」
ベルナ:「ええ!!!『吾輩は猫である』の作者の猫も、本の中で牡猫ムル(カーテル・ムル)の逸話を引用しているのよ!!!」
ロビン:「ふーん。」
ベルナ:「ところで、今途中まで読んだんだけど、そのムルって猫は自分のことを『ゴットリープ王の親友で高位高官にのぼった牡猫”長靴をはいた猫”の子孫』だと思ってて、自称天才猫で、動機も意義も中身も何から何まで人間のもののネコ流の焼き直しの学問芸術(内容もネコレベル)に夢中なのよ!!!まあ、社会的立場の獲得とか世渡りのための教養なんかとは縁がなさそうってとこはナイスっていうか面白いとは思うけど、とにかく、全く、困った猫なのよ!!!」
しるく:「ジュッビジュジュ(ベルナの言うことはメチャクチャでよくわかんないな。あー、けど、つまり、ムルって奴は威張りんぼなんだな。ベルナみたいだ。)」
ベルナ:「いいえ!!!私はとってもおりこうさんよ!!!オッホッホッホッホ!!!」
しるく:「ジュッビジュブ(ほら威張ってる)」
・追記
あまりにも偉そうなのでボツになった序文として載ってた序文↓
「序文」
「作者の禁止されたるもの」
「真の天才に生得な自身と落ちつきとをもって、おれは自分の伝記を世におくる。それは、どういう修養をすれば偉大なる猫になれるかということを世人に知らせるためである。また、おれの卓越性を全面的に世人にみとめさせ、かたがたおれを愛し、重んじ、尊敬し、驚嘆し、少しはおれを崇拝させんがためでもあるのだ。」
「万が一無礼にも、この非凡な本のすぐれた価値に多少の疑念を起すものがあったら、その人のお相手としては、才気と理性と、おまけに鋭い爪を有する一匹の牡猫が控えておることを、とくと考えてもらいたい。」
「(一八--)五月、ベルリンにて」
「ムル」
「(有名な文学者)」
ロビン:「自信満々でやたら偉そうにアホな事を書き散らして楽しくやってたムル君だったけど、後半になってくると、ネコ社会とかイヌ社会とかでまいったことになっちゃうみたいなんだ。」
「その社会的教養というのは、けっきょく、ありとあらゆる角や尖りを削りとって、ありとあらゆる人相をただ一つの人相に形作ろうとする努力(かえってそのために一つの人相にまとまらなくなってしまうんだが)にほからならないのだ。しかるとき彼らは、内心の不満をすてて、その教養の本質と、その根低となる貧弱な前提条件とをこだわらずにわけなく認めるとともに、かならずやその認識によって、その教養を欠くべからざるものとして要求する不思議な世界の市民となる事であろう。」(←引用する部分が微妙だから意味伝わらないと思うけど、これは「社会的教養」を皮肉ってる文。社会に適応できなくたっていいんだもんねー!と開き直っている。)
モンモン:「↑で、ムル君にしてはなかなかイカした(イカれた)ことを言い出すんですけど、その後には編集者の注意書きが!(笑)」
(編集者の注意書き---ムルよ、私が遺憾に思うのは、君が他人の書物でちょいちょい威張り散らすことだ。そのために君は、ひどく愛読者の信用を落とすことになりやしないかしらと、当然なことながら私は心配しないではいられないのだ。---君がそんなに自慢してみせる観察は、悉く楽長ヨハネス・クライスラー(ムルの飼い主の一人。狂人の一歩手前)の口から直接出ているのではないか?)
ロビン:「ちなみに、ムル君が下敷きとして破って使ってたせいでムルの伝記に混ざって印刷されちゃったって言う、そのヨハネス・クライスラーって人の伝記のページが、実はこの本の半分くらいを占領してるんだよ。」
・追記2
「『ゴットリープ王の親友で高位高官にのぼった牡猫”長靴をはいた猫”の子孫』だって!?なんかむずかしそーな歴史上の人物の名前なんか出して知ったかぶりしやがってむかつくぜ!」とお思いの方へ
『ゴットリープ王』はムル君のすんでる世界にしかいない架空の人物です。多分。っていうか『ゴットリープ王』はイコール、グリム童話の『ながぐつをはいたねこ』に出てくる『三番目の息子』のことです。要するにムル君は童話のネコちゃんに仰々しい肩書きをつけて敬ってるってことで、面白おかしいと思ったから引用したんですよ!!(笑)
ちなみに長靴をはいた牡猫の主人の名前(偽名)は、グリム童話では「このとき伯爵の名前として牡猫は、長々しく、もったいぶった名前を申し立てました」とされてて、シャルル・ペロー(フランス)版では「カラバ侯爵」とされている。(←これぞ知ったかぶり)
・追記3
ベルナ:「あと、ちょっと面白いと思ったのは、登場人物が文字通り精神病患者のオンパレードだってとこですかね。作者のE.T.A.ホフマンに言わせると、精神の倒錯した人間を描くことが、『現代におけるメルヘン』なんだとか!」(←たまたま聞いたラジオ(普段は決して聞かない放送大学)で得た情報)
投稿者Manudog
: 2004年3月 9日 17:17
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